議会質問報告① 長期入院高校生への学習支援について

質問の背景
岡山県内にて長期入院する高校生から単位修得について相談を受けました。学校、病院、県教委、支援団体の協力と試行錯誤の結果、教室と入院病室をつないだ遠隔授業を実現しました。改めて関係各位に感謝するとともに誰より頑張った本人にエールを送ります。
遠隔授業により単位を修得し無事に進級、来年春には卒業見込みです。この取組をその学校における成功事例に留めず、県教委としてノウハウを蓄積し次のケースに生かすべきです。岡山県では遠隔授業を望む高校生が常に多数入院している状況ではありませんが、本人に学ぶ意欲があり、治療に影響がないのであれば学習環境を整えることは社会の役割ではないでしょうか。そんな思いで質問しました。
質問原稿
疾病により長期間にわたり入院生活を送る児童生徒に対する学習支援として、義務教育である小中学生に対しては院内学級の制度があります。本県においては岡山大学病院、倉敷中央病院、津山中央病院等、県内7つの医療機関に設置され、治療と並行して授業を受けることが可能です。これに対し長期入院高校生に対する学習支援は遅れており、進級や卒業に必要な単位が修得できず留年、退学というケースが全国的に生じています。長期入院中の本県高校生から単位認定に関する相談を受け、2018年11月議会にて遠隔授業等による単位認定について質問しました。教育長からは「ICT機器等を活用した遠隔授業の実施を研究している」との答弁でした。当時、技術的な問題の他に文部科学省が定める基準を満たすため県教委、学校、医療機関、支援団体による試行錯誤が続きました。その結果、教室と入院病室を繋いだ遠隔授業が実施され、単位を修得し進級することができました。その後、国の動向として2019年11月に受信側の病室に当該高等学校の教員を配置するとした従来の要件が緩和され、2020年4月には学校教育法施行規則の改正により、36単位までに限られていた遠隔授業による単位修得数の上限が緩和されました。さらに、コロナの影響でICTを活用した授業の取組は格段に進歩しています。ここにきて、遠隔授業実施の障害は技術的にも人員配置といった運用面でも大きく改善されたといえます。本県では遠隔授業を望む高校生が常時多数長期入院している状況ではありませんが、本人が望み、医療的見地からも可能であるならば、学ぶ機会を保障することが社会の役割ではないでしょうか。遠隔授業を成功させた取組をその学校での1つの成功事例に留めるのではなく県教育委員会としてノウハウを蓄積し、次のケースに生かすべきと考えますがいかがでしょうか。教育長のご所見を伺います。
また、この取組には医療機関や支援団体との連携が不可欠です。遠隔授業の実施に積極的に取り組んでいる医療機関や支援団体との情報共有や課題整理等の連携をさらに進めることが必要と考えます。教育長のご所見を伺います。
答弁
長期入院高校生への学習支援について
(1) 遠隔授業の成功事例
(問)
長期入院高校生への遠隔授業実施の障害は、技術的にも運用面でも大きく改善している。本人が望み、医療的見地からも可能ならば、学ぶ機会を保障することが社会の役割だ。遠隔授業を成功させた取組をその学校での一つの成功事例に留めるのではなく、県教委としてノウハウを蓄積し、次のケースに生かすべきだが、教育長の所見を伺いたい。
(答)
 まず、遠隔授業の成功事例についてでありますが、県教委では、「長期療養児教育サポート相談窓口」を設置し、保護者等からの相談等に対応するとともに、学校の支援体制づくりのアドバイザーとして専門家を派遣する事業を実施しているところであります。
また、今年度新たに、支援団体や大学の専門家、教員からなる推進チームを立ち上げ、長期療養児の学習機会確保のための方策や円滑な復学に向けた支援の在り方等について研究を進めるとともに、これまでの実践を通して蓄積した遠隔授業のノウハウ等をガイドブックにまとめ、高等学校等に周知する予定としております。こうした取組を通して、長期療養児への支援がさらに充実するよう努めてまいりたいと存じます。
(2) 医療機関等との連携
(問)
遠隔授業を成功させる取組には医療機関や支援団体との連携が不可欠だ。遠隔授業の実施に積極的に取り組んでいる医療機関や支援団体との情報共有や課題整理等の連携をさらに進めることが必要だが、教育長の所見を伺いたい。
(答)
 次に、医療機関等との連携についてでありますが、県教委では、市町村教委や学校の要請に応じ、アドバイザーとして支援団体等の専門家を派遣するとともに、関係医療機関や支援団体等との協議会において、支援事例の成果や課題等の情報共有を図っているとこ
ろであります。
お話のとおり、遠隔授業の実施に当たっては、医師による専門的な知見や支援団体の専門家が有するノウハウが必要であり、今後も引き続きガイドブック作成等の機会を通して、さらなる連携を図ってまいりたいと存じます。
以上でございます。
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